尾道の街を歩きながら、少しずつ坂を上っていくと、視界がゆっくりと開けていきます。
その途中で立ち寄ったのが、尾道を代表する古刹・千光寺です。標高約140メートル、大宝山の中腹に佇むこの場所からは、尾道港や市街地を一望することができます。

千光寺は、大同元年(806年)に弘法大師・空海によって開かれ、中興は武将・多田満仲公によるものと伝えられています。境内に立つと、瀬戸内の穏やかな海とともに、この地で長い年月が静かに積み重ねられてきたことが、自然と伝わってくるように感じられます。
特に印象に残ったのは、山肌に張り出すように建てられた舞台造りの本堂です。朱色の堂宇は「赤堂」とも呼ばれ、全国的にも珍しい造りとされています。作家・林芙美子が『放浪記』の中で「赤い千光寺の塔が見える」と記した情景を思い浮かべながら眺めると、千光寺が尾道の原風景として語られてきた理由が、静かに胸に落ちてきます。

境内からの眺めは、時間帯によって表情を変えます。
尾道水道や向島まで見渡せる景色は、朝には澄んだ空気の中で凛とした印象を、夕方には柔らかな光に包まれた落ち着きを感じさせてくれました。同じ場所に立ちながら、異なる時間の流れを味わえるのも、この場所ならではの魅力だと感じます。
千光寺は古くから「火伏せの観音」として信仰を集め、現在では諸願成就の観音様としても親しまれています。頼山陽が「六年重ねて来たる千光寺」と詠んだように、何度でも足を運びたくなる理由が、この静かな空気の中にあるように思えました。
参拝を終え、しばらく景色を眺めながら過ごす時間は、尾道という町そのものと向き合うような、穏やかなひとときでした。観光地としてだけでなく、心を落ち着ける場所として千光寺を訪れる価値を、実感する時間でもあります。
千光寺での余韻をそのままに、尾道での滞在をゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
旅の続きを静かに過ごす場所として、ヴィラ asterisk ONOMICHIでの滞在もおすすめです。
千光寺
〒722-0033
広島県尾道市東土堂町15-1
※参拝時間・定休日・休業日につきましては、事前に公式ホームページをご確認ください。








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